意匠権について知ろう!(入門編)

みなさんは「意匠権」という言葉を聞いたことはありますか?

「意匠」というのはデザインのことで、商品の形・見た目を法的に守ることができる権利です。ではなぜデザインを法律で保護する必要があるのでしょうか?

ここでは、そんな「意匠権」について基本の部分を分かりやすく解説していきます!

目次

これが大事!

まずは意匠権を知るうえで大事なキーワードを押さえていきましょう。

意匠権は「見た目=デザイン」を守る権利

権利化には特許庁の審査が必要

有効期限は原則、出願から25年間

デザインの一部分だけ登録できる「部分意匠」制度あり!

日本の意匠権は日本国内のみで有効

どういうこと?

それではさっそく、それぞれのポイントについて詳しく見てみましょう。

意匠権は「見た目」を守る権利

特許が「技術やアイデア」を守るのに対して、意匠権は製品のデザイン(形、色、模様など)を保護するための権利です。

例えば、新しいスマートフォンのカーブしたフォルム、ユニークな形の水筒、かっこいい車のボディデザインなど、目で見て分コレ製品の外観を他人に真似されないように守ることができます。

デザインには、消費者に「コレかわいいから欲しい!」「カッコいいものを手に入れてビシッときめたい!」と思わせる力があり、商品が持つ大きな価値のひとつです。これをしっかりと法的な権利として認めることで企業やデザイナーの創作意欲を高め、より魅力的な製品が生まれる環境を支えています。

権利化には特許庁の審査が必要

意匠権を取得するには、特許庁に意匠登録出願をし、審査を通過する必要があります。特許とは違い審査のための請求(審査請求)をする必要はなく、自動的に審査が始まります。

出願から権利取得までの流れは次のとおりです。

STEP
願書を作成

 意匠登録したいデザインについて、フォーマットが決められている意匠登録出願の願書を作成します。

STEP
意匠登録出願

願書を特許庁に提出(=出願)します。

STEP
特許庁の審査

出願後、順番に特許庁の審査が行われます。審査の内容は書類に記載された内容に不備が無いか(方式審査)、すでに同じようなデザインが世の中に無いか等(実体審査)、についてチェックされます。

登録できない理由があるときは、特許庁からその理由が書かれた「拒絶理由通知」と呼ばれる書類が送られてきます。書かれている内容を見て不備を補正したり、反論があれば意見書として主張できます。ただし、出願したデザインそのものは補正できない等、補正できる内容には制限があります。

STEP
登録査定

審査をクリアすると登録が認められます。ここまで来ればあと少し!

STEP
登録料納付

登録査定を受けてから30日以内に登録料を支払うことで初めて意匠権が発生します。

支払いを忘れると、せっかく登録査定になった出願が却下されてしまうので注意しましょう。

STEP
登録完了、公開

ついに意匠権ゲットです!この権利を維持するためには毎年更新料を特許庁に支払う必要があります。これも、支払わないと意匠権が消滅してしまうので注意しましょう。

また、意匠権は登録が完了してはじめて公開されます。登録されなかった出願意匠が公開されることはありません。

有効期間は原則、出願から25年間

意匠権の保護期間は、出願日から25年間です。これは2020年4月から施行された意匠法の改正で延長されました。

この期間中、権利者は自分のデザインを独占的に使用でき、他者が許可なく同じまたは類似したデザインを使うことを防ぐことができます。

有効期間を満了したデザインは社会全体の財産となり、誰でも自由に使えるようになります。

デザインの一部分だけ登録できる「部分意匠」制度あり!

従来の意匠登録は製品全体のデザインを保護するものでしたが、「部分意匠」制度によって製品の特徴的な部分だけを保護することも可能になりました。

例えば、スマートフォン全体ではなく特徴的なカメラ部分のデザインだけ、車全体ではなくヘッドライトの形状だけ、というように特徴的な部分だけを登録できます。

この制度によって、より細かく効果的にデザインを保護できるようになり、デザイナーやメーカーにとって大きなメリットとなっています。

日本の意匠権は日本国内のみで有効

意匠権は取得した国でしか権利は有効ではありません。つまり、日本で意匠権を取得しても日本国内でしか通用しません。

海外でも権利を守りたい場合は、保護が必要な国ごとに意匠出願する必要があります。例えば、日本、アメリカ、中国で保護したいなら、それぞれの国で手続きをしなければなりません。

ただし、「ハーグ協定」という国際的な仕組みを利用すれば、一度の国際出願で複数の国に同時に出願したのと同じ効果を得られるため、手続きをある程度簡略化できます。

グローバルなビジネスを展開する場合は、戦略的にどの国で特許を取得するか考える必要があります。

よくあるギモン

Q
意匠出願~登録までの費用はどれくらい?
A

自分ですべて手続きする場合、約25,000円です。※2025年4月時点

出願料は16,000円、登録料は初年度8,500円で、特許より比較的安価です。更新には別途更新料が必要です。また、専門家(弁理士)に依頼すると別途費用がかかります。

国内出願のための手続き料金をシミュレーションしてみたい人は特許庁が提供しているシミュレーターが便利です。(このシミュレーターでは弁理士費用は含まれません)

Q
特許権のように「進歩性」がある必要はありますか?
A

意匠権が与えられる条件として「進歩性」は必要ありません。

意匠権には特許権のように技術的な進歩が求められることはありません。ただし似たような考えの登録要件として「ありふれたデザインの組み合わせではなくデザイナーの創意工夫があるか」(=創作非容易性)というものがあります。

まとめ

意匠権は製品のデザイン(見た目)を守るための重要な仕組みです。

デザインは製品の付加価値を高め、消費者の心を引きつける重要な要素です。優れたデザインは企業のブランド価値にも大きく貢献します。

皆さんの中にも将来、デザイナーやものづくりに携わる人がいるかもしれません。自分だけのユニークなデザインを生み出したときには、意匠権での保護も検討してみてください。

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