
今回は特許の基本についてのお話よ。
ここでは特許の種類や、書かれている内容の内訳について説明するわね。




何事も基本が大事ですよね、よろしくお願いします!
特許に興味はあるけれど、「公報ってそもそも何?」「どこを読めば内容が分かるの?」という疑問を持つ人は少なくありません。
特にクリエイターや学生、新入社員の方にとって、特許公報は文字の密度が高く、専門用語も多くて近寄りがたい存在です。
そんな難しそうな特許公報ですが、実は“読みどころ”さえ分かれば、思ったよりもシンプルに理解できます。
この記事では、特許初心者の方でも特許公報の基本を押さえられるように公報の種類と公報の構成をやさしく解説していきます。
特許公報を読むことは、他社の技術動向を知ることにもつながりますし、自分の技術が侵害していないかのチェックにも役立ちます。
それでは、本題に入っていきましょう。
まずは特許公報を見てみよう
まずは実際の特許公報を見てみましょう。



出典:特許第7711342号より抜粋
この特許公報は任天堂株式会社が2023年11月9日に出願した「ゲームコントローラ、ゲームコントローラセットおよびシステム」に関する特許の最初の1ページです。
これだけ読んでも何が書かれているのかさっぱり分からない人がほとんどだと思います。
ここでは公報の種類や構成などの基本情報から特許公報を読みやすくするためのコツについて解説していきます。
公報の種類
私たちがJ-PlatPatなどを利用して手に入れることができる特許文書(=公報)にはいくつか種類があります。
ここではその中でも最初に知っておくべき「特許公報」「公開特許公報」「特許協力条約に基づいて公開された国際出願」について紹介します。
特許公報



まず基本として、公報の種類はその公報の1ページ目の一番上に記載されています(上図赤丸部分)。
自分が今、どんな種類の公報を読んでいるのか最初にしっかりと把握しておきましょう。
特許公報とは、特許庁の審査を経て特許として認められ、特許権が「設定登録」されたときに発行される公報のことです。
特許公報に書かれている発明は、原則として特許権が成立しているものなので侵害しないように注意する必要があります。
ただし、権利期間の満了や年金不払い、無効審決などによって特許権が有効でない場合もあるので、今の権利状態をしっかりと確認しましょう。
特許の権利状態はJ-PlatPatの文献表示ページや検索結果一覧などで確認することができます。



出典:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
ステータスが「特許 有効」となっているものは特許の権利が生きているので、うっかり権利侵害しないように要注意です。
公開特許公報



特開2025-162494より抜粋
出願された特許願書は原則として出願から1年6ヶ月後にその内容が公開されることになっています。
公開特許公報とは、そのタイミングで特許庁が公開する特許出願された書類を掲載した公報です。
つまり、出願された書類が公開されている段階のものであり、特許庁による審査を受ける前〜審査中の状態、あるいは取り下げや拒絶査定となったものを含みます。
そのため、公開特許公報の内容が、そのまま最終的な特許権の内容と一致するとは限りません。
ここで気を付けたいのは公報のステータスが審査請求前や審査中となっているものです。
これらはまだ特許として成立していない状態の公報なのですが、決して無視してよいものではありません。
将来的に特許になる可能性があるため、もしも気になる特許出願があれば定期的に進捗をチェックするようにしましょう。
ちなみに、公報のステータスが「(出願の)却下・拒絶」となっているものはその出願に基づく特許権は成立しません。
したがって、その出願を根拠に特許権侵害を問われることはありません。
ただし、同じ技術について別の有効な特許や、意匠権など他の権利が関係する場合もあり得るので、重要な技術ほど周辺も含めて確認しておくと安心です。




でも先輩、審査中に補正して特許請求の範囲が変わったりしますよね。
最終的にどんな権利範囲になるのか分からないんじゃないですか?




そのとおりよ、わかなちゃん。
ただし基本的には補正すると権利範囲が狭くなることがほとんどだから、公開特許公報の内容でも侵害しないかチェックしておくのが大切ね。
特許協力条約に基づいて公開された国際出願



特許協力条約に基づいて公開された国際出願とは、特許協力条約(PCT)に基づいて行われた国際出願が、世界知的所有権機関(WIPO)によって国際公開された公報のことです。
本来、特許権や知的財産権は各国ごとの法律で定められているため、複数の国で特許を取得しようとするとそれぞれの国ごとに別々に出願手続きをする必要があります。
しかしそれでは出願するだけで膨大な手間と費用がかかってしまいます。
そのような問題を解決するために、特許協力条約(PCT)では、この条約に基づいて出願された特許願書をすべての加盟国に対して同時に一括で出願したのと同様の効果*を持てる制度を設けています。
※ただし、実際に各国で特許権を取得するためには、その後、各国ごとの国内移行手続きが必要です。
つまり「特許協力条約に基づいて公開された国際出願」とは、この制度に基づいて出願された特許願書が国際公開されたもの、ということです。
ここで注意したいのは、国際公開された段階では、いずれの国でも特許権はまだ成立していない という点です。
日本で権利が有効になっているかどうかを確認したい場合は、対応する日本の出願(公開特許公報や特許公報)や、そのリーガルステータスを別途チェックするようにしましょう。
特許公報の構成
特許公報の種類が分かったところで、次は特許公報の構成について見ていきましょう。
ここを理解すれば、自分が欲しい情報がどこに書いてあるのかが分かるようになるはずです。
特許公報は大きく分けて次の5つのパートに分かれます。
- 書誌情報
- 要約
- 特許請求の範囲
- 発明の詳細な説明
- 図面
それでは、それぞれに何が書かれているのか見ていきましょう。
書誌情報(フロントページ)



公報の一番最初にはその特許に関する基本的な情報が載っています。
ここで見るべき主なポイントは次のとおりです。それぞれ見ていきましょう。
1.公報種別
公報種別には前章で説明した公報の種類が記載されています。
- 特許公報
- 公開特許公報
- PCT国際公開
「特許公報だと思って読んでいたら公開特許公報だった!」なんてことにならないように、最初にしっかりと確認しておきましょう。
2.特許番号 or 公開番号
特許公報や公開特許公報には特許庁から固有の番号が付与されます。
- 特許公報:「特許第○○号」
- 公開特許公報「特開20xx-○○」
- PCTの国際公開番号「WO 20xx/○○」
公報を探すときに番号検索が可能なので、気になる公報があればこれらの番号を控えておけば、後で同じ公報にアクセスするときに便利です。
3.(原)出願日、優先日、出願番号
書誌情報で必ずチェックしたいのは出願日です。
特許権の存続期間は、原則として出願日から20年間です。
(ただし、特許権そのものが発生するのは「設定登録」されたときです。)
その特許権がいつから有効なのか、いつ満了になるのかをしっかりと把握することは侵害回避などの特許戦略を考える上でとても大切です。
また、書誌情報には特許出願したときに付与される番号である出願番号(特願20xx-○○)も記載されています。
後から検索したり社内で管理したりするときに便利なので、必要に応じて確認するようにしましょう。
4.特許権者
特許権者とは、その名の通りその特許権を持っている者のことです。
基本的に発明者から特許権を譲り受けた法人であることが多いですが、個人が会社と関係なく発明したものなどは特許権者が個人であることもあります。
書誌情報に書かれている特許権者は公報が発行された当時のものであり、権利譲渡などがあった場合は実際の特許権者と記載されている特許権者が異なることがあるので注意しましょう。
最新の権利の状態はJ-PlatPatでも確認することができます。
ただし、1~2日程度のタイムラグがあることと、特許権者の住所の記載がないことがあるため、正確な情報が必要な場合は必ず登録原簿を確認するようにしましょう。
登録原簿について:特許庁HP https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/genbo_about.html
要約



要約欄には、その名のとおり公報に書かれている内容の要約が書かれています。
公開特許公報の書誌情報のすぐ下に載っているのでその特許の概要をすぐに掴むことができます。
ただし、公開特許公報には原則として要約が掲載されますが、特許公報には載っていないケースもあります。
特許請求の範囲



出典:特許第7711342号より抜粋
特許請求の範囲には、特許権として保護を求める技術内容そのものが書かれています。
ここに書かれている要件をすべて満たすものが、特許権としての効力を受けます。
特許請求の範囲は、その権利の「肝」となる重要な部分です。
侵害の有無を検討したり、自分のアイデアが被っていないかを確認したりするときには、必ず丁寧に読み込むようにしましょう。
発明の詳細な説明



出典:特許第7711342号より抜粋
「発明の詳細な説明」には特許の内容についての詳しい説明が記載されています。
いわゆる特許の明細書の本文部分です。
明細書の中はさらに細かい項目に分かれていて、【先行技術文献】、【発明が解決しようとする課題】、【課題を解決するための手段】、【発明を実施するための形態】などの項目があります。
また、明細書にある「【】」で囲われた数字は明細文の段落番号を示しています。
あとから参照するときに便利なので、慣れてくると「請求項1の○○は、【0030】段落あたりに詳しく書いてあるな」といった使い方ができるようになります。
特許請求の範囲は発明を概念化して書かれる傾向があるため、何を指す言葉なのか分かりにくいことがあります。
そのような語句は明細書に具体的な定義や実施例が書かれていることが多いので、特許発明を理解する助けとして「詳細な説明」を活用すると読みやすくなります。
図面



出典:特許第7711342号より抜粋
公報に書かれている内容を説明するために必要な図面が記載されています。
特許請求の範囲や要約が難解で理解できないときも、図面を見ると一気に分かることもあるのでしっかりチェックしましょう。
ただし、図面は特許文書の必須項目ではないため図面の記載がない公報も存在します。
図面にはそれぞれの構成要素に番号が振られていて、【発明の詳細な説明】の文中でその番号が指しているか示されているか、【発明の詳細な説明】の一番最後にまとめて表記されています。
まとめ
ここまで、特許公報の種類と構成について解説してきました。
特許公報は一見すると難しく感じますが、構造さえ押さえれば必要な情報をスムーズに取り出せるようになります。
特に大事なポイントは次の3つです。
- まずは公報の種類を確認すること(特許・公開・PCT)
- 書誌情報では「出願日」をチェックすること
- 権利の核心は「特許請求の範囲」に書かれていることを意識すること




なるほど!
特許って最初に読むべきポイントが決まっているんですね!




そうなの!
コツを掴めば知りたい情報がどこに書いてあるかすぐに分かるようになるわよ。









