商標の「識別力」とは?初心者でもわかる基本の考え方【図解付き】

商標登録を調べていると必ず出てくるキーワードが「識別力」です。一言でいうと、「その商標を見たとき、消費者がどの会社の商品・サービスかを区別できる力」のことです。

たとえば、飲料水に「水」という文字だけを商標登録しようとしても認められません。「水」はどの会社も使う言葉なので、一社だけが独占することはできないからです。このように、識別力がない商標は原則として登録できません。

目次

識別力とは「○○といえば△△」という結びつき

そもそも「商標」は英語で trade mark(トレードマーク)といいます。trade は「取引・商売」、mark は「しるし・目印」。つまり商標とは、「取引の場で自分の商品・サービスを示すしるし」です。

このしるしが機能するには、消費者の頭の中に「○○といえば△△」という結びつきが生まれていることが必要です。

【例】識別力のイメージ

  • 「リンゴをかじったロゴ」といえば → Apple(スマートフォン・パソコン)
  • 「黄色の”M”」といえば → マクドナルド(ハンバーガー)
  • 「シンプルな丸みのあるチェックマーク」といえば → ナイキ(スポーツ用品)

マークを見るだけで「あの会社の商品だ」とわかる——この力が識別力です。

逆に、「水」「高品質」「東京」といった言葉は、どの会社の商品にも使えてしまうため、特定の会社との結びつきが生まれません。消費者が「この言葉=あの会社」と認識できない商標は、識別力がないと判断されます。

識別力の「強さ」はグラデーションがある

識別力は「ある・なし」の二択ではなく、強弱のグラデーションがあります。

【図解】識別力の強さ

造語商標
識別力:強
恣意的商標 暗示的商標 記述的商標 普通名称
識別力:弱
ソニー
コダック
APPLE
(パソコン)
スカイプ
(空+電話)
「東京産」
「高品質」
「りんご」
「パソコン」
✅ 登録しやすい ⚠️ 原則NG ❌ 登録不可

造語商標(最も強い):もともと意味のないオリジナルの言葉です。「ソニー」「コダック」のように、どんな商品も連想させないため識別力が高く、登録も通りやすいです。

恣意的商標:商品と無関係な既存の言葉を使ったものです。Apple社の「APPLE」はパソコン・スマートフォンとリンゴは無関係なので、識別力があると判断されます。

暗示的商標:商品の特徴を間接的に連想させる言葉です。「スカイプ」(sky+telephoneから)のように、直接説明しているわけではないため識別力が認められます。

記述的商標(弱い):産地・品質・用途などをそのまま説明する言葉です。「東京産」「高品質」などは、どの会社も必要とする表現のため原則として登録できません。

普通名称(登録不可):「りんご」「パソコン」のように商品そのものの名前は識別力がゼロとみなされ、登録できません。

識別力がないと判断される主なケース

登録が認められない商標には、いくつか典型的なパターンがあります。

パターン具体例
商品・サービスそのものの名前「パソコン」「カフェ」
業界で広く使われている表現清酒の「正宗」
産地・品質・原材料を説明する言葉「国産」「高品質」「東京」
ありふれた氏名「田中」「佐藤」
簡単すぎる記号や文字「A」「1」「○」

使い続けることで識別力が生まれる場合もある

識別力がないとされる商標でも、長い期間にわたって使い続けた結果、消費者がその商標を特定の会社のものだと認識するようになった場合は、例外的に登録が認められることがあります。これを「使用による識別力の取得」といいます。

📌 ポイント:この例外が認められるには、使用した期間・販売数量・広告展開など、消費者への浸透度を具体的な証拠で示す必要があります。ハードルはやや高めです。

まとめ:識別力は商標登録の「入口」

  • 商標(trade mark)とは取引の場で自社を示す「しるし」のこと
  • 識別力とは「○○といえば△△」という、消費者の頭の中の結びつき
  • 識別力が弱い・ない商標は原則として登録できない
  • 識別力には強弱のグラデーションがあり、造語が最も登録しやすい
  • 長年の使用実績によって、後天的に識別力を認められる場合もある

商標登録を検討するときは、まず「この名前・ロゴに識別力があるか」を確認するところから始めましょう。識別力が弱い名前でも、独自の造語を組み合わせたり、ロゴデザインで差別化することで登録できる場合もあります。

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